[NBA] フランク・二リキナ〜家族のこと、MJに会ったこと、ニックスに指名されるまでの話

二リキナ2 NBA | New York Knicks

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このオフの間に「二リキナどーなるんだろう」ってずっと思ってニュース待ってたけど。これからはマブスで頑張ることが決まったので、記念にわたしが大好きで何度も読み返してる二リキナの記事を紹介します。

オリジナルはずっと前になっちゃうけど、THE PLAYERS’ TRIBUNEに2017年9月29日に掲載された「Merci, GOAT.」というエッセイです。MJに初めて会ってから、ドラフトでニックスに指名されるまでのストーリーを二リキナ本人が書いたものです。

プロフィール

まずは簡単なプロフィール

Wikipedia Frank Ntilikinaを参考にしています

フランク・ニリキナ Frank Ntilikina G

  • 1998年7月28日生まれ
  • ベルギー・イクセル出身
  • 国籍 フランス
  • 身長 6ft 4in 1.93m
  • 体重 200lb 91kg
  • NBAドラフト 2017年1巡目8位 ニックス指名

キャリア

  • 2015−17 SIG Strasbourg
  • 2017−21 New York Knicks 
  • 2021−  Dallas Mavericks

Merci, GOAT. by フランク・二リキナ

 参考記事:THE PLAYERS’ TRIBUNEより Merci, GOAT. by Frank Ntilikina

*GOATって「the Greatest Of All Time」の頭文字です。ヤギのゴートと同じ発音で「史上最高」って意味です。

二リキナ2
THE PLAYERS’ TRIBUNE

マイケル・ジョーダンとの出会い

マイケル・ジョーダンが、これまでに聞いたなかで最も素晴らしいことを教えてくれた。

自分はフランスのストラスブールから来た、16歳の痩せたバスケットボール選手。特別な取り柄など何もない、普通の男の子だ。そんな自分がジョーダンブランドクラシックに招待された。

ニューヨークに行ったのはその時が初めてだったけど、黄色い車体に黒い文字のタクシー、ドラマ「フレンズ」、大きなコーヒーショップ。。アメリカのイメージはいつも好きだった。JFK空港からイエローキャブに乗ってハイウェイを走りながら遠くに摩天楼を見た時「本当に来たんだ。夢の始まりだ」と思ったのを覚えてる。

教会に行って神様に会えるわけじゃないのと同じで、ジョーダンブランドクラシックと言ったって、実際にジョーダンに会うなんて思ってもいなかった。

ブルックリンのアリーナに到着後、他の選手たちと小さな部屋に通され、何が起こっているのかも分からないまま5分ほどしたとき。。

ジョーダンが入ってきた。すぐそこにジョーダンが。。

「Oh s***. MJ」

初めてみた印象は。。彼がすごく変わったと感じた。別におじさんと思ってなかったわけではないけど。YouTubeで見ていたMJはもっとずっと若かったから。

彼は部屋にいた選手たちに話を始め「Welcome to New York」と言って時には握手をしながら部屋を歩きだした。

よし、質問しなければ。チャンスは一度。

でも自分はあまりにシャイで。いやシャイどころか臆病だった。震えながら小さな声で聞いた

「こんにちは、マイケル。成功の鍵はなんですか Hello, Michael. Can I ask you, what is the key to all your success?

MJが自分を数秒見た。

その時、ありがちな事を言うだろうなと想像していた。みんな「一生懸命」とかについてよく話す。MJもきっと「誰よりも一生懸命練習しなさい」なんて言うに決まってる。

でも、実際はそうじゃなかった。彼の言ったことに本当に驚いた。そしてその事について一日中考え、一週間考え、今でも考え続けている。

何を言ったかって?答えはちょっと待って。

自分にとってMJの話が何故そんなにビックリだったかを理解してもらう為に、まず少し自分についての話をする。

家族のはなし

母は兄のBriceとYvesを連れ紛争中のルワンダから逃げた。まずベルギーへ行き、そこで自分が生まれ、そしてフランスへ行った。自分は長いこと家族が紛争でどんな思いをしてきたのかを知らなかった。ビデオゲームとバスケが好きなただのフレンチキッズで、兄たちといつも外でバスケをしてはこてんぱんにされ、家に戻ったらNBA 2Kをしていた。外のバスケでは決して兄に勝てなくても、ゲームでならたまに勝つことができた。

何故かわからないけど、ただただバスケが大好きで、いつだって夜中まで起きてテレビでNBAを見たかったけど、母は必ずNoと言った。母は看護師で2つの仕事を掛け持ちして一日中働き、家に帰ったらみんなの夕飯を作って寝るだけの生活をしていた。

自分が8歳だった2007年のNBAファイナルのことを覚えてる。レブロンの最初のファイナルで相手はトニー・パーカーのスパーズ。どうしても見たくて母に頼み込んだが許してもらえなかった。仕方なくベッドに入ったが、兄たちがリビングのテレビで試合を見ているのは分かっていた。眠れない。。兄たちのところへ行き何度も何度も頼み込んで、それに面倒になった兄たちはついに「OK。見てもいい。でも絶対静かにしろ」と言って許してくれた。

疲れて寝ている母を途中で起こすことなんてできない。テレビのボリュームを落とし、ティム・ダンカンが活躍しても静かにして、お互い腕を振り回したり、掴み合って「今の見た??」と盛り上がっても、とにかく音をたてることはなかった。

これは素晴らしい想い出になった。自分は8歳だったけど「いつかNBAでプレーしたい」と分かっていたし、兄たちはこの夢を応援してくれて、コートではとにかく容赦なく鍛えられた。

兄たちのことはカッコイイと思っていたが、どれだけ大変な思いをしていたかは全く気づかなかった。ある時、一緒にNBA 2Kをしようと思いBriceの部屋に行ったら「勉強中」と断られ、Yvesのところへ行っても同じことを言われた。どれだけ待っても一緒に遊んでもらえないから「何をそんなに勉強してるの」と聞いたら「医学部に行くため」と言われた。「兄が?医学部?」と思ったけど、それ以来兄たちは夕飯以外部屋から出てこなかった。そして夕飯の時は母も兄もみんな疲れきっていた。「これが働くということか」と感じた。

ただそのハードワークな姿勢がどこから来てるのか分からなかった。ルワンダよりも良い生活を求めて来たのは知ってる。一度兄にルワンダのことを聞いたら「知る必要はない」と言われた。

義理の父の部屋にルワンダの本が何冊か有るのを知っていたので、ある日こっそり見てみた。言葉は分からなかったけど、紛争中の写真を見た。兵士ではなく、女性や子供の死体がそこら中を埋めつくしていた。それで十分だった。本を閉じて本棚に戻した。「母と兄は本当にあそこに居たのか」「あそこを生き抜いたのか」

この本のことは誰にも話していない。見なかったフリをしている。でも何故みんながあんなにハードワーカーなのか分かった。そして自分も同じようになろうと誓った。バスケットボールで。。12歳になったとき、バスケの専門の学校に入学した。フランスでプロチームの選手になるにはどうすれば良いのか教えてくれた。「よし、それが最初の目標だ」

15歳のとき「SIG Strasbourg’s youth academy」と契約した。16歳、17歳のときはFIBA under-18トーナメントとジョーダンクラシックで海外へ行き、 Basketball Without Bordersではトロントにも行った。「ものすごく」では無いが、「心配ないくらい」は十分稼いでいた。そこで母に言った。「もう2つも仕事をするのはやめて、少しリラックスしたら」

そこで彼女が言った言葉は忘れない

「子どもたち全員の夢がかなった時にやめるから」

「でもYvesは外科医に、Briceはフィジカルセラピストに、自分はプロバスケ選手になったから、みんな夢はかなったよ」

「でもそれはあなたの夢じゃないでしょう。夢はNBA選手になることでしょう。夢がかなったらリラックスするから」

2017年NBAドラフト

ここでブルックリンでの2017年NBAドラフトの話をする。この時はもう大変で。。ドラフト前日、自分のチームはフレンチリーグのファイナルでゲーム4を戦っていた。チームを失望させたくはなかったけど、自分の人生で最高の瞬間を逃したくもなかったので、試合後母と兄たちと一緒に飛行機でパリからニューヨークへ飛んだ。JFKに到着。イエローキャブに高層ビル、3年前と何も変わっていなかった。でも今回自分はNBAでドラフトされようとしている!

どのチームに行く事になるのか全く見当がつかなかった。ニックスが興味があるようだとTwitterで見たけど、興味があるのは自分一人だけではないだろう。がっかりしたくなかったので、事前情報を知りたくなかった。だからグリーンルームに入った時、エージェントに「Twitterで速報を出す人が居るはずだけど、この瞬間を台無しにしたくない。コミッショナーの口から直接聞きたい」「何があっても絶対何も言わないで」と言った。彼は「まあまあ‥」と言っていたけど「絶対に!」と念を押した。

ドラフトが始まった。アダム・シルバーが出てきて。。この感情をなんと表したら良いんだろう。。

13歳の時、2012年のドラフトをテレビで見て、アンソニー・デイビスが指名されたのを写真に撮り「夢がかなった瞬間」としてインスタに上げた。

そして今自分が同じ場所にいる!

。。。エージェントはノートを手にしていて、シルバーが名前を呼ぶ前に電話で何か情報を聞いてはペンで名前を消していく。

1位‥彼が名前を消すのが見えた、フルツだった。

2位‥消した。ロンゾだ。

エージェントの彼を見ないようにしたけど、どうしても目の端で見てしまう。4位、5位、6位。。7位はミネソタだったけど、ピックはシカゴにトレードされた。彼が名前を消した‥ラウリが指名された。

次はニックスだ。

目がキョロキョロしてしまうけど、振り返らないようにした。

エージェントが名前を消した。。そして今度はノートを閉じた!!

携帯がポケットに入っていたけど、見たくなかった。次の瞬間、突然携帯のバイブが鳴った。メッセージが次々入ってきて振動が止まらない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

家族を見て「黙って!何も言わないで‼」と言った。

アダム・シルバーが表彰台に出てきた。

「2017年NBAドラフトの8位。ニューヨークニックスが指名したのは。。フランク‥‥」

With the 8th pick in the 2017 NBA draft, the New York Knicks select … FRANK….

二リキナ1
THE PLAYERS’ TRIBUNE

家族とステージの裏に来るまではがまんしたけど。そこで泣いた。

ファイナルでプレーするため、その夜の飛行機でフランスに戻った。

機内で母に「息子たち全員の夢がかなったから、リラックスできるね」と言った。今度は母も「リラックスできる」と言った。

でも自分の夢は今始まったばかり。世界で一番素晴らしい街でプレーするんだから、リラックスどころではない。

MJのことば

さて、16歳の自分にMJが言ったことば。。

「こんにちは、マイケル。成功の鍵はなんですか? Hello, Michael. Can I ask you, what is the key to all your success?

少し考えて彼は言った

「バスケットボールを愛すること。ゲームを愛していない限りグレートにはなれない。世界中の誰よりもバスケを愛していたら、犠牲を払っても良いと思うようになる。朝早く起きて、一番になるためにはどんな事でもしたいと思うようになる。そのために、まずはバスケットボールを本当に愛さなければならない」

What you have to do is love basketball. You can’t be great unless you really love the game. Once you love basketball more than anyone else in the world, then you’re willing to sacrifice. You’re willing to wake up early. You’re willing to do what it takes to be the best. But first, you have to really love it.

シンプルだけど、考えれば考えるほど理にかなってる。多くの人が「どのレベルまで上手くなれると思いますか」と聞いてくるけど。その答えは分からないし、NBAで何が起こるかも分からないけど。。でも何よりもゲームが本当に好きだということは分かってる。

これがMJがレジェンドである理由だ。彼が言ったことについて3年間ずっと考え続けている。史上最高のMr.ジョーダン、アドバイスをありがとう。

Thank you for your advice, Mr. Jordan.

Merci, GOAT.

ってお話でした!

まとめ

NBAに来てから、4シーズンをニックスで過ごした二リキナ。この4シーズンで2017−18シーズンから順に

  • 出場試合 78/ 43/ 57/ 33 計211試合
  • 出場時間 1706/ 904/ 1187/ 322 計4119分
  • 平均出場時間 21.9/ 21.0/ 20.8/ 9.8分

参考:Basketball Reference:Frank Ntilikina

これだけニックスで頑張ってくれました!お疲れさまでした〜

この話を読むたびに、ニックスに来てから今日までのことをいろいろぐるぐる思い出し、いろいろぐるぐるすぎて、結局何もうまく言えないんだけど。

MJのアドバイスについては今でも考え続けてるのかな。ニックスに居て大変だったこともあったと思うけど、良かった時もあったよね?これからもバスケを愛し続けて活躍するのを祈ってる!二リキナ今までありがとう、ずっと応援してるから〜!!!

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